FATEパロ

フェイトパロ
 
 「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ参上した。問おう、テメェがおれのマスターか?」
──半ば攫われるように連れてこられた少年を、戦争の生贄にはしたくなかった。騙し討ちするように令呪を書き替え、その子の代わりに参戦した。
ドンキホーテ・ロシナンテは魔術師の一族の落ちこぼれだった。
「これ、本物だったのか……」
 昔の伝で集めた小さな歯車。噂で伝わる、潜水艦ポーラータング号の一部と聞いてはいたが、一か八かの賭けにロシナンテは勝ったと言える。
医神、もしくは死の外科医トラファルガーは、大海賊時代末期の大英雄に違いないのだから。
呆然とするロシナンテに、死の外科医は忌々しげに担いだ大太刀でロシナンテの腹をついた。
「──魔術回路を無理矢理に増幅させて、何年寿命を捨てた?命を粗末にしやがって」
「はは、すげえなそこまで一目でわかるのか」
「おれはローを治してやりてぇ。かわいそうに、不治の病っつてこんなとこに連れてこられちまって。……きっと治る。聖杯があれば、なおしてやれるんだ」
「召喚された以上、あんたはおれのマスターだ。だが、勘違いするなよ。おれは誰の指図も受けねえ」
「ああ。だが聖杯を取るのは手伝ってもらうぜ」


「──魔術刻印もない、ドンキホーテの落ちこぼれ。刻印を破棄しようとした父にお前はよく似ている。お前に何ができる?聖杯を手に入れる前に炉にくべられるのがオチだ。……さっさと手を引け」
「いやだね。ドフィ。おれは魔術師にゃあならねぇし、刻印もいらねえ。ただ、願いを叶えてぇだけだ!」

 ▽
「トラ男ぉ!久しぶりだなぁ!」
「──冗談だろ」
「いやー、前のマスターぶっ飛ばしちまってもう腹減って腹減ってよ!なんか食いもんねえか?」
にししと、笑う少年の肩に担がれているのはか細い子供だった。
「──そのガキ、どうする気だ!」
「あ、おい待てコラさん!別にそいつは……」

 

 ▽
「グラララ、おれを呼びやがったのはどこのアホんだらだ?」
「……おやじ?」
「…………ああ。てめぇか。おまえが俺のマスターか」
「おやじ!!おやじだ!!」 
「ああそうだ。おれが“白ひげ”エドワード・ニューゲート。おまえの親父だ。バカ息子」
「おれがおやじを王様にするからな!」

 ▽
「マスター、……おれもあんたのことをコラさんと呼んでも?」
「おお?良いぞ!ローとかガキどもが呼んでくれるんだけど、セイバーも呼んでくれんなら嬉しいぜ。不思議だよなあ、そう呼ばれるとなんでもしてやれるような気持ちになるんだ」
「そうかよ。……あんたは本当に変わらねェなコラさん」

 ▽
「──ガキの頃さ。ながくながーく続いた魔術師の一族の分家の一つに生まれ育った。あるとき父親が言ったんだ。『人に戻ろう』ってな。魔術を放棄して、刻印も受け継がせず、全部捨てて暮らそうって。おれは別によかったよ、スペアの次男だからな。……でも、ドフィはそれが許せなかった」
「それで──兄貴は父上の刻印を無理矢理引き剥がして、移植しようとした。……でもなあ、ダメだったんだ。刻印ってのは移植にとんでもねえほどの準備がいる。体もそうだし、魔術回路も。だから、魔術刻印は父上から引き剥がされたまま、ドフィがただ持ってるのさ」
「あいつが聖杯を求めるのは……」

 ▽
「……医神、トラファルガー、だろ」
「おう」
ベットの上から起き上がれぬまま、幼いローは気丈な目でセイバーを見上げた。
「不老不死の手術もできる、世界最高の外科医なんだよな」
「大袈裟だが、まぁ間違っちゃいねぇよ」
白いシミがローの肌を覆っている。文字のように文様を描くように蝕んでいる。フレバンスの呪い――今は存在しない国の名を関する、家に伝わる呪いなのだという。
「……おれは死ぬはずだった。死んでもよかった。──この呪いはおれの家にずっとあるもんで、妹に降り掛からなくてよかったと思ってたくらいだ。治そうとすると、家族に災いが降りかかるから。もうどうでもよかった。でもさ……」
ローはくしゃりと笑って、キッチンに立つ大きな長い背中を見つめる。
「コラさんが生きてて欲しいって泣いてくれたから。家族以外全員、おれのことを魔力供給装置にしか見てなかったのに。……だからさ、セイバー」
セイバーは静かに伸ばされた小さな細い手を見つめた。セイバーの無骨な刺青だらけの手が、ローの手を掴んだ。
「絶対、コラさんを死なせないで」

 ▽
「ロシナンテェ!!!!」
「……おれも、ドンキホーテの血が流れてるんだぜ、ドフィ」
「……拒絶反応がひどすぎる、持って十分だぞコラさん!」
「十分だ」
ロシナンテの背中から肩にかけて魔術刻印が覆い尽くさんばかりに広がる。セイバーの麻酔と処置がなければ動くことさえできないだろう。
青く輝く刻印が、ロシナンテの魔術回路を切り裂くように広がっている。

 ▽
ラスボスはルート分岐でルートの一つにラスボス:ローが出る。
「コラさん……いやだ、おれバケモノになんてなりたくないよ……!」
聖杯の器と呪いでホワイトモンスター化するローを止めるために刻印移植して、ローと心中ルート。
「大丈夫だ!おれはずっとお前のそばにいる。愛してるぜ、ロー」

 ▽
コラさんは落ちこぼれ()なので、霊墓マリージョアに叩き込まれたあと生き延びた生還者。無理矢理魔術回路活性させたりバグらせたりする霊薬をいくつか秘蔵している。それを使えば莫大な富を手に入れることはできなくもない。いくつかを売って「ポーラータングの歯車」を手に入れた。