あいつはいつも先にいる。駆け抜けていってその背中がどんどん小さくなっていくような気がしてならない。追いかけても追いかけても追いつけない英雄。おれと違って遠くを見る目と、勇気と、正しい正義感を胸に憧れを追い求められる青年。
あいつを無様に追いかけるおれはきっとみっともないことこの上ないだろう。
でもおれはどうにかあいつの背中が見える場所にいたかった。がむしゃらに突き進みすぎて危うい背中を守りたかったし、悪意から守ってやりたかった。あいつが夢を叶えるところをおれは側で見たかった。
あいつはおれの友だった。
上官である以上にコビーは友達だった。
なのに──なのに。
はっと自分のうなされる声に目を覚まして頭を抱えた。
「うう……コビー……!」
だらだらと流れある情けない涙が仮眠室のピローを濡らしていた。行きは一緒に居たはずのあいつは、帰り道にはもういない。
涙を拭って身を起こす。
SWORDの拠点へ艦が近づいている時間だ。
「ヘルメッポ少佐! 着岸の指揮を……!」
「──今行く!」
剥ぎ取ったシーツで顔をめちゃくちゃに拭いてコートを被る。サングラスで、赤い目は隠れるだろう。
完
※最新話のヘルメッポさんが好きだった記念