「ミナト!ようやったのう!」
そう言ってくしゃくしゃと僕の頭をかき混ぜるのが、自来也先生のほめ方だった。クナイの持ち方も危うい下忍のころから、火影になっても全然変わらない。
僕とクシナの結婚式のときも、そんな感じでくしゃくしゃに頭を掻き混ぜたものだった。自来也先生ときたら、頭を見たらくしゃくしゃにせずにはいられないんだ、なんて班の中で気恥ずかしさ交じりに言い交わしたりしていた。
「クシナ!ようやったのう!」
「ミナト!ようやったのう!」
セットした髪がくしゃくしゃになるわ、なんてクシナは憤慨していたけど、自分の髪が好きじゃなかった頃、そうやってもらえるのがとても嬉しかったんだって、結婚してから聞いたっけ。
自来也先生は、ほめるときはそうやる人だった。
クナイ肉刺でぼこぼこした手のひら。
厚い手のひらは、それでも柔らかくて、かさついていたけれどとても力強い手のひらだった。親指にはいつも口寄せの跡が残っていたのを覚えている。
あの手のひらが鮮やかに印を結び、敵を屠る様は見事で豪快で、『伝説の三忍』の名をひしひしと感じた。
まるっきり子供みたいなことをして、クシナに叱られたこともあった。暇じゃから執筆だとかいって、任務中に書いてたエロ小説の原稿をぶちまけた日から三日、クシナによそよそしくされて、僕と仲直り作戦を考えたこともあった。
「オビト!よくやったね!」
ゴーグルの下の目がふわりと笑んだ。
あの人にしてもらったように、ぐしゃぐしゃに髪を掻き混ぜて、そう伝えた。
「カカシ!よくやったね!」
「リン!よくやったよ!」
二人にもそうしたら、カカシは照れてそっぽを向くし、リンは顔を真っ赤にして照れていたね。
ねえ、オビト、カカシ。
どうか、君たちの頭を、くしゃくしゃにしてあげられますように。
よくやったね、と僕に最後に伝えさせて欲しい。三人、一人ぼっちで頑張った僕の大事な子供たちのために。
「オビト、カカシ、リン……よくやったね」
完