オーロ・ジャクソンの宝物

 おトキの腕の中で眠るモモの助に少年たちは小っちぇえ……、と小さな声で惚けたように呟く。おトキはくすくすと笑った。一応自分より小さな子供を起こさないように声を顰めるという配慮をしているのが面白かった。
「モモの助というの、妹は日和。よろしくね、お兄様たち」
「お、お兄様ぁ? おれたちがァ!?」
 バギーが声をひっくりかえし、その横でシャンクスは目を丸くした。
 その挨拶が功を奏したのか、それとも単に自分よりも小さな子供が興味深かったのか、シャンクスとバギーはオーロ・ジャクソンの仲間たちが想像した以上に甲斐甲斐しく世話をやいた。腰を屈めてまだ歩行のおぼつかないモモの助の手をひき、日和をおぼつかない様子であやす姿はいつしか当たり前の光景になった。姿が見えなければ「ばぎー、しゃんくしゅ」と探すモモの助や、二人でかくれんぼや鬼ごっこをしているのもいつしかオーロの日常に溶け込んでいく。
「あいつらがこんなに面倒見がよかったとは。わからねェもんだな、がきなんてのは。レイリー」
 とクロッカスが笑うのに頷く。それぞれに二人の小さな兄妹を可愛がる姿は今までにみたことがないものだった。
「おやすみももちゃん〜いいこでね〜♪」
 夕暮れのオーロの甲板に調子っぱずれのシャンクスの歌が聞こえてきて、レイリーはふっと吹き出した。ビンクスの酒を子守唄代わりにしてそだった子供が、子守唄を歌っている。
 期限付きの航海はもうすぐ終わる。終わりに向けて進んでいる。
 けれどきっと、この日々は宝物になるだろう。