墓参りにきた海賊のはなし

 おいおいこんなところまで入り込んじゃあ行けないよ海賊。花束なんかもってどこに行くんだい。この先は墓場だよ。海賊に殺された海兵達のな。
 あ? お前さん肝が太いな……。七武海だからといってお前らが海賊なことには変わりないんだが。
 分かった、分かったよ。お前の悪魔の実の能力は知ってる。バラバラにされちゃあ堪らねェ。普通の海賊ならさっさととっ捕まえれるものを。
 で、どこに行きたいんだ?
──は……?
 ドンキホーテ・ロシナンテ中佐?
 なんでお前がその名を。
……いや、良い。案内すると言ったのはおれだ……。
 びっくりしただけだよ、もう十年以上前に死んだおれの友人の名前を海賊から聞くことになるとは思わなかったんだ。ロシナンテの墓参り? 本当か! へえ……はは。
 へへっ、そうかそうか。こっちだ。何を笑ってるかって? そりゃあ……ちょっと嬉しいのさ。あいつのことを話せる海兵なんて殆どいなくなっちまった。頂上戦争や海戦で……。おれなんかの身分であの人にお目通りも叶わねェし!
 あの人? いや……おれが口にするのはなァ。
 まあでも海賊だろうがおれの仲間の話ができるのは嬉しいさ。
 懐かしいなあ……、正義感が強くて、嘘が下手でそれであほみたいに優しい海兵だった。おれの同期だったんだ。今は退役されたんだがゼファー先生にしごかれた仲間でな。腕は立つし、同期の中では出世頭だったんだが、いかんせんドジっ子でな。
 知ってる? へへ、そうかそうか。
 じゃああいつの好きな花は知ってるか?
 丁度良い、近くに花屋があるから見繕ってやるよ。まあお前さんが好きな花でも喜ぶだろうが。
 なんだよ、そんなに変な顔して。
 さてついた。ここだよ。誰か来られてたのかな、掃除してある。久しぶりだな、ロシナンテ。
──じゃ、おれは行くよ。
 あんまり長居すると海賊嫌いに見つかるから気をつけな。海賊に殺された海兵の墓場なんだから。
 いいよ、海賊から礼なんて。
 それよりもさ……あいつのこと忘れないでいてやってくれたらうれしいよ。