オーロ・ジャクソンの子供たち

 鮮やかに明るい空。波は穏やかで風も申し分なく帆を膨らませている。
「もう出航!?」
「昼!? もう今!?」
 まとわりつく見習いの子どもを両腕にぶら下げた副船長がもう馴れた様子でそのままぐるりと持ち上げて両肩に乗せる。子ども達もおびえもせずにきゃらきゃらと笑いながら副船長の頭に抱きつく。
「おい、髪を引っ張るな」
「はーい」
 片方が素直に返事をし、そのまま片割れと話を始める。
「その二人、重くねェのか」
 と、尋ねれば副船長は肩をすくめた。
「こんなチビの一匹や二匹。だがやかましいからお前一匹持っててくれ」
 ぽいと放り投げられた赤い髪の小僧は馴れた様子で身軽に肩に乗る。
「おでんさん! もう出港!」
「おう。赤太郎、本当に軽ィな。モモとそんなに変わらないくれェか?」
 担ぎなおす手間もなく自分で好きなように動き回る子どもをそのままに尋ねれば、それは不服であったようで唇をとがらせる。
「モモよりも兄ちゃんなんだけどおれ!」
「やーいチビ!」
 副船長の肩にひっついている片割れが揶揄えばよけいに頬を膨らませる。
「みてろよ、すぐにおでんさんよりレイさんよりでっかくなるからさ!」
「ふん、お前よりもおれァもっとでかくなるね! 船長よりでかくなる!」
「じゃあお前ら降りて自分で歩け。そこの荷物食料庫に運んでくれ」
「「えー」」
「モモより兄ちゃんなんだろうお前ら」
 しぶしぶと肩を降り小突きあいながら子ども達は果物袋をもって船に駆け上がっていく。
「モモと日和のおかげでちょっと成長したかもしれん」
「そうか?」
 副船長が二人を見る目は穏やかに優しい。父親の目とよく似ていた。白ひげが息子達を見る目と同じ、優しい目だ。この男がそういうならばそうなのだろう。
 空は快晴。風は順風。
 オーロ・ジャクソン号は今港を離れてゆく。