――――今
御手杵に瓜二つだが、御手杵は着ることのないスーツに身を包み、幾分かほっそりとした青年が、語り終えてにこりと微笑んだ。
「――それから二百年以上たって、今更、父に会えるとは」
いやでも、復元された父には幾度も会いに行ったなぁ――青年は苦笑して肩を竦める。
「――あなたが、御手杵の息子さん……」
呆然と審神者は息を呑んだ。
「はい。所謂半妖ってやつです。今でこそ神扱いですけど」
「お、御手杵に会わなくてもいいんですか?」
審神者の言葉に、青年は微笑んだ。
「会える時は会えます。今はちょっと時期じゃないだけで。それに、俺のこと覚えているかどうか――。父のことを頼みます」
一礼した青年は穂先を丁寧に拭うと鞘にしまい、手慣れた仕草で長大な槍身を槍袋にしまいこんだ。
そのまま立ち去ろうとした青年を呼び止めたのは、手入れ部屋からのかすかな声だった。
「……また、来いよ」
青年ははっと目を丸くして手入れ部屋を見つめた。
「お前は、いっつも俺には、なんにも相談しないんだもんなぁ。そんなに薄情に見えるかあ?」
驚きから、くしゃりと顔を歪めた青年は、失敗した笑顔を作って言い返す。
「だったら……もっと、人間っぽいアドバイスしてくれよ。父様」
「俺は刺すことしかできないからなぁ」
困ったような声が、襖の向こうから帰ってくる。そして聞こえてきたのは静かな寝息だった。
審神者と青年は顔を見合わせて苦笑した。
「御手杵もああ言っているので、また来てくださいね」
「ええ……お邪魔させてもらいます」
「久し振り、父様」
「あぁ、あぁ……お前、無事によく帰ってきたなぁ」
御手杵は驚きから、ふ、と相好を崩し、長い手で息子を抱きしめた。
「三名槍が一つ、御手杵の息子だぜ。戦争の一回や二回で折れるもんか」
放せよ、ということもできずにされるがままの息子は同い年か年下に見える父親を抱きしめ返した。
「そうだよな。俺の息子だもんな!」
御手杵はへらりと笑って、同じ色をした髪をかき混ぜた。