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──なあ、三日月。みたかったなぁ──
青白く死相の張り付いた顔。折れ果てた刀の林の向こうで、ぽっかりと口を開けた異常な門。必死に抱えていても、もう三日月も腕の感覚が薄かった。ただ、暖かな主の命がどこまでも流れあふれている。
──主……、まったくおまえは。
がらがらに荒れた声があきれ果てて主を呼ぶ。
──おまえだけでも観てきてよ。俺の、俺たちの──
安堵した吐息とともに、門が閉じる。流れすぎた命はもう戻りはしない。三日月は主をかき抱きながら嘆く。
──ああクソ。こんな大変な本丸もうご免だ。次があるなら、こんな馬鹿どもじゃなくて、おれは、のんびり、縁側で茶を飲んで、それで。
馬鹿馬鹿しい喧噪をのんびり眺めて、縁側に座り、のほほんと笑うじじいになるのだ。