彼の悪夢
和泉守兼定は自ずからそれを知っている。
刀の終わりの時代。滅びに向かうものとして生み出された我が身が、銃や大砲に劣るものであると知っている。
刀の終わりの時代。名剣名刀の中で己があまりに矮小な刀であることを知っている。
それくらいのことは誰に言われずとも分かっている。
誰よりも、この本丸のどの刀よりもあの無力を知っている。
せめて己がもっと名高き二代目であれば、かつての主の評判を上げただろう。
新々刀の我が身ではただ実用性を誇ることしか出来ぬ。
十二代と連綿続いた兼定の一振りとしては良い刀だ。
だが、それだけだ。
──オレはそれ”だけ”だ。
号もなく、名物でもなく、刀の値打ちで家宝であったわけでもなく。
それゆえに、オレは恐怖する。
深く、深く、口にすら出せぬほどの恐れにのたうち、惨めに縋るのだ。
ゆるしてくれと。
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