七 海底/無力 - 1/2

彼の悪夢

 和泉守兼定は自ずからそれを知っている。
 刀の終わりの時代。滅びに向かうものとして生み出された我が身が、銃や大砲に劣るものであると知っている。
 刀の終わりの時代。名剣名刀の中で己があまりに矮小な刀であることを知っている。
 それくらいのことは誰に言われずとも分かっている。
 誰よりも、この本丸のどの刀よりもあの無力を知っている。
 せめて己がもっと名高き二代目であれば、かつての主の評判を上げただろう。
 新々刀の我が身ではただ実用性を誇ることしか出来ぬ。
 十二代と連綿続いた兼定の一振りとしては良い刀だ。
 だが、それだけだ。
──オレはそれ”だけ”だ。
 号もなく、名物でもなく、刀の値打ちで家宝であったわけでもなく。
 それゆえに、オレは恐怖する。
 深く、深く、口にすら出せぬほどの恐れにのたうち、惨めに縋るのだ。
 ゆるしてくれと。