ナミたちと海兵たちが和気藹々と話す中、ブルックがロビンを呼び止めて甲板の隅へ呼んでいた。
「ロビンさん」
くろぐろとした眼孔が真剣な表情でロビンを見下ろしている。少しばかり困惑も混じっている。ロビンは首を傾げて彼を見上げた。
「なあに、ブルック」
「……デロリアンの海霧。わたしの記憶が正しければ、人さらいの海霧の話……でしたね」
「ええ。一連隊を丸々飲み込んで消してしまったとも言われる、神隠しの霧。……遭難してしまったというのが本当のところなんでしょうけれど。70年前のジョンという男はその霧で未来を見たと言ったことさえある」
読んだ本の記述を思い出しながら伝えると、ブルックもうなずく。
「ええ。未来人ジョンの噂は私も聞いたことはあります。それにもう一つ。……“笛吹き”のビフは、もう50年以上前にインペルダウンへ収容された海賊です。かつて私たちルンバー海賊団がグランドラインに入ってすぐに」
ブルックの言葉に、ロビンはブルックを見上げて驚いた顔をした。
「まさか……」
「まさかかもしれません。けれど、私たちはその可能性を覚えていましょう」
ロビンは驚きを納めて静かに頷き、楽しげに話す仲間たちをブルックとともに見つめた。