ひとふり虎徹 前編
贋作とされた蜂須賀虎徹の物語を守るため、長曽祢虎徹が出陣する話
ひとふり虎徹
長船の里の子守唄
夢見の悪い小豆と、燭台切の話。用語を捏造しています。“のみとり”と同一設定。
原作
ある冬、城址にて
パライソ 四郎の物語を強める大倶利伽羅とキリシタンの子どもたちの話
ミュージカル準拠
ある夜、湯島にて
パライソ ある元幕臣と大倶利伽羅の話と、おまけに鶴さん。
ミュージカル準拠
終 御手杵の槍
うららかな春のそよ風が、頬をくすぐる心地よさにうっすらと目を開いた。「これが御手杵かあ」声がする。自分に目があることを何となく感じた。ガラスケースの向こうに自分をみる瞳がある。とろりと柔らかく暖かな泥のような微睡みの心地よさに、御手杵はほほ…
つきもの奉公
四章 役目と奉公
けたたましいサイレンの音がついに聞こえて、屋敷はにわかに浮き足だった。そのころには御手杵はたいがい蔵にいて、蔵をでるのは力仕事にかり出されたときばかりになっている。空襲警報で逃げ出す家中を案じながら、蔵の中でまんじりとせずにほかの憑喪神と共…
つきもの奉公
三章 刀の役目
蜻蛉切はどうやら沼津でつつがないらしい。そういう話を、質屋の鏡から風の噂で伝え聞くころ、戦火は音を立てて海を吹き渡り、いつしか幾度目かの、かの槍の切り落とした秋津が野原に空き地に飛び回る季節になっていた。晩秋の、弱々しい日の垂れ込めた昼下が…
つきもの奉公
二章 槍の奉公
翌日、御手杵は再び洋装に身を包んで本多の屋敷を訪なっていた。昨日の今日で、松平家も本多家も驚いたようだったが、少しばかり無理を言って訪れた。「蜻蛉切に本当にもう憑喪神が憑いていないのか、我らの方法で確かめたい」そう告げると、本多の家の奥方は…
つきもの奉公